1. 誘導電動機が破損時に焼損しやすい理由

誘導電動機が焼損に至る主な原因は、過負荷、拘束(ロック)、絶縁劣化、電源異常などによる過電流や過熱です。これらの要因が複合的に作用することで、最終的に焼損に至ることが多くなります。
過負荷、拘束(ロック)、絶縁劣化、電源異常などによる過電流や過熱

過負荷・拘束:

機械的な負荷が大きすぎたり、回転部分が何らかの原因でロック(拘束)したりすると、モーターは定格以上の電流を消費しようとします。
この過電流状態が続くと、コイルの温度が上昇し、絶縁材が劣化・溶融して短絡(ショート)を引き起こし、焼損に至ります。

絶縁劣化:

長年の使用、高温環境、湿気、振動、電気的ストレスなどにより、コイルの絶縁材が劣化します。
絶縁性能が低下すると、コイル間でリーク電流が発生したり、短絡したりしやすくなり、最終的に焼損に至ります。

電源異常:

電圧の変動(過電圧、低電圧)、欠相(三相電源のうち一相が供給されない状態)、周波数の異常などは、モーターに過電流や異常な発熱を引き起こす可能性があります。
これらの異常が続くと、コイルや絶縁材にダメージを与え、焼損に至ります。

冷却不足:

冷却ファンが故障したり、通風孔が埃などで詰まったりすると、モーター内部の温度が上昇しやすくなります。
高温状態が続くと、絶縁劣化を加速させ、焼損のリスクを高めます。
冷却不足

2. 焼損の予兆を事前に察知しにくい理由

初期段階では無症状または軽微な症状:

絶縁劣化や軽度の過負荷は、初期段階では明らかな異常として現れにくいことがあります。
異音や振動が発生しても、軽微な場合は見過ごされがちです。

内部で進行する劣化:

絶縁劣化はコイル内部で進行するため、外観からは判断しにくいです。
また、拘束状態も、内部の機械的な問題であるため、発見が遅れることがあります。

保護装置の誤作動または未設置:

過電流保護装置(サーマルリレーなど)が正しく設定・動作していない場合、過電流状態が検知されず、焼損に至るまで保護されないことがあります。
そもそも保護装置が設置されていない場合もあります。

3. 日々の点検で注意すべき点

以下の点に注意して日常的に点検を行うことで、誘導電動機の異常を早期に発見し、焼損を未然に防ぐことができます。

運転状態の確認:

異音、振動、異臭がないか確認する。
回転速度が安定しているか、負荷電流が定格値を超えていないか確認する。
運転中に異常な発熱がないか、温度計などで確認する。

電源状態の確認:

電圧、電流、周波数が正常範囲内にあるか確認する。
電源ケーブルや接続部に緩み、損傷、変色がないか確認する。

冷却状態の確認:

冷却ファンが正常に動作しているか、異音がないか確認する。
通風孔に埃などが詰まっていないか確認する。

外観点検:

モーター本体に汚れ、損傷、変色がないか確認する。
端子箱の接続部に緩み、腐食がないか確認する。

定期的な専門家による点検:

絶縁抵抗測定、振動測定、温度測定など、専門的な点検を定期的に実施する。
これらの点検を継続的に実施し、少しでも異常を感じたら、すぐに専門家に相談することが重要です。早期発見と適切な対応が、誘導電動機の寿命を延ばし、焼損による事故を防ぐことにつながります。